社交不安障害(SAD/あがり症) 旧称:社会不安障害18

アサーションとは

 それではここで、アサーションとはどんなことか、アサーションとそうでないことの違いはどこにあるのか、どうしてアサーションができないのか、などについて考えてみましょう。  あるアメリカの心理学者は、人間関係の築き方には、大きく分けて三つのタイプがあると言っています。第一は、自分よりも他者を優先し自分のことを後回しにするタイプ、第二は、自分のことだけを考えて他者を踏みにじるタイプ、第三は、第一と第二の黄金率ともいえるあり方で、自分のことをまず考えるが他者にも配慮するタイプです。 アサーションとは、第三のタイプをいいます。そして、アサーショントレーニングでは、第一のタイプを「非主張的」または「ノンアサーティブ」、第二のタイプを「攻撃的」または「アグレッシブ」、第三のタイプを「アサーティブ」と呼びます。  では次に、いくつかの実例を取りあげながら、三つのタイプの言動について理解を深めることにしましょう。以下に、日頃私たちがよく体験する状況について、三タイプの反応を記してあります。まず、状況を読んだら、あなたならどんな反応をするか考えてみましょう。次に、三タイプの反応を読んでください。それぞれの反応は、典型的なものにするために、やや強調した表現になっていますが、自分が考えた反応、日頃とりがちな反応は、どれに近いでしょうか。

アサーションケース1
外食中に

 中村氏は郷里から上京してきた友人と、銀座のレストランで夕食をとっています。先ほどステーキの焼き加減をレアで注文しましたが、ウェイターが運んできたステーキは、ウェルダンに焼きあがっていました。中村氏は……

非主張的

 友人に、「こんなに焼けてしまっている。もうこのレストランにはこないぞ」と愚痴をこぼすが、ウェイターには何も言わず、笑顔で受け応えをする。せっかくのステーキはまずく、注文通りのものを要求し直さなかったこと、こんなところに友人を連れてきてしまったことを後悔する。何だか自分がすっかり萎縮してしまった感じになる。

攻撃的

 怒ってウェイターを呼ぶ。そして、注文通りでないことを必要以上に大声で怒鳴り、もう一皿注文通りのステーキを要求する。中村氏は自分の要求が通ったことと料理には満足したが、怒鳴ったことでその場が気まずい雰囲気になってしまい、友人に対してはきまりが悪く、また、夕食の雰囲気はすっかり台無しになってしまう。一方、ウェイターは侮辱された感じがして、不愉快な気持ちになる。

アサーティブ

 ウェイターに合図をしてテーブルに呼び、「自分はステーキをレアで注文したこと、しかし、ウェルダンのステーキがきてしまったこと」を伝えて、ていねいに、しかしはっきりと「レアのステーキととりかえてほしい」と頼む。ウェイターは間違いを謝り、まもなくレアのステーキを運んでくる。中村氏も友人も夕食を満喫し、中村氏は自分のとった言動にも満足して、夕食を終える。もちろん、ウェイターも客が気持ちよく過ごしたことで、気分がよい。

アサーションケース2
友人との間で

 佐藤さんは大学三年生です。彼女は、授業にもよく出てノートを取り、まじめで優秀な学生で、ゼミの先生や友人だちからも認められ、尊敬されています。ある科目の学年末試験が間近に迫ったある日、同じゼミの三島君から、ノートがなくて困っているので佐藤さんのものを貸してほしいと頼まれました。佐藤さんは、今から帰ってその科目の勉強をしようと思っていたところでした。佐藤さんは……

非主張的

 自分の勉強の計画が潰れそうになることの不安を押し殺して、彼が困っていることに同情し、「ええ、字が汚くてもよければいいわよ」と言う。三島君はもちろん、「それでいい」と言うので、貸すはめになる。その日は、試験勉強ができないことを悔やみながら、漫然と過ごす。

攻撃的

 明らかに不愉快な顔をして、「今頃ノートを借りようなんてちょっと常識ないんじゃない。今まで何してたのよ。私、そういう人には貸さないことにしてるの」と言い捨てて、その場を立ち去る。後になって、佐藤さんは三島君を侮辱したことが気になり、罪悪感で、試験勉強に手がつかなくなる。三島君も、そんなに言われる筋合いはないと情けない気持ちになる。もちろん、その後、二人の関係はぎこちないものになる。

アサーションケース3
夫婦間で

 Aさんは会社から疲れて帰ってきて、ちょっとうたた寝してしまいました。そのため夕食の準備が遅れ、帰ってきた夫に『晩飯まだできてないのか!!!』といわれて腹が立ちました。Aさんは、どのように自分の気持ちを夫に伝えればいいでしょうか?

攻撃的

 『何を言っているの!!!私だって疲れて帰って来たんだから遅れる事だってあるわよ。そんなに言うなら、自分で食事を作ればいいじゃないの』

受け身的

『ごめんなさい。疲れていてつい・・・』 アサーティブ(自己表現的) 『つい疲れてうたた寝しちゃった、ごめんね。でも、そういう言い方はないと思うわ。こんなときにはあなたにも手伝ってもらえると嬉しいんだけど』

アサーションケース4
夫婦間で

 Dさんは退社しようとしたときに上司から呼び止められて、思いがけない仕事を言いつけられました。『ちょっと予定があるので』と断りましたが、『何を言っているんだ。どこから給料が出ていると思っているんだ!!!』と怒鳴りつけられ、1時間の残業を強制されました。実はその夜は家族で食事に出かけることになっていて、待たされた妻は『いつも約束を破ってばっかりなんだから。家族のことをどう考えているの?その日の仕事が終わっているんだったら、きちんと断ればいいじゃない。あなたのことだから、何も言わずに課長さんの言うままに仕事をやっていたんでしょう。ねえ、私の話を聞いているの?』とDさんを責めました。Dさんはこれにどう答えればいいでしょう?

攻撃的

『うるさいな。そんなに大声を出さなくても聞こえてますよ。仕事も家族のためにやっているんだよ。少しは俺の身になってくれてもいいだろう。そんなに言うなら、俺をおいて勝手に出かければよかったんだ。』

受け身的

『ごめん。課長に一応は言ったんだけど聞いてくれなかったんだ。』

アサーティブ

『ごめん。きちんと断ったんだけど、課長は聞く耳を持たない人なんだ。せっかく出かけるんだから、そんなに怒らないで、少し楽しくやろうよ。これからは気をつけるから。』

アサーションケース5
親子関係

 あなたには高校生の息子がいます、夏休みのある晩、友だちと花火大会に出かけ、夜中の二時に帰ってきました。あなたは、十二時には帰ってくると思っていたので、何か起こったのではないかととても心配して、イライラしながら待っていたのでした。

非主張的

 帰ってきたのを見て、息子には何も言わず、黙って眠りにつく。

攻撃的

 一体、今まで何をしていたんだ! 今何時だと思っている! 一晩中人を寝かせないつもりか。まったく思いやりも何もない奴だ」と、いきなり怒鳴る。

アサーティブ

「とても心配したよ。十二時には帰ると言っただろう。だからすごく気になってね。大丈夫だったのか? 遅くなると電話してほしかったな」と、相手を責めるのではなく、しかしはっきり自分の気持ちを伝える。

アサーティブとはどんな言動かがおよそ分かったと思いますが、ここで、非主張的、攻撃的、アサーティブの言動についてそれぞれまとめておきましょう。