摂食障害 外来通院による治療、入院による治療

外来通院による治療

◆神経性無食欲症の患者さんの場合

 神経性無食欲症の患者さんにおいては、治療に対する動機づけが形成されたとはいえ、状況によっては絶えず心が揺らぐことを念頭において治療に当たる必要があります。少し体重が増えだすと肥満恐怖が生じ、治療への動機が弱くなったり、巧妙にカムフラージュしたりします。したがって、常に病気を治そうという動機づけの強化、維持に配慮しなければなりません。そのために治療者は、この病気の資料を提示しながら、患者さんに病気の内容を伝え、自身を変えて、生活を変えるように決意させることです。そして、この病気を否認していた状態から病気を認めて治療を受ける動機づけを高めることです。さらに、治そうと努力している間に生じる心理的抵抗や、治った状態や予防についても十分説明します。


 次に体重測定ですが、週1回行うことを約束します。どうしても体重が気になって、1日に何回も測定したり、逆に体重増加が恐怖となって測定を拒否する患者さんもいます。体重測定の態度で、過剰な関心や肥満恐怖がある程度判断できます。治療目標体重の決定は、基本的には患者さんの納得のうえで決めますが、神経性無食欲症患者さんの場合、標準体重の-10%位が目安になります。これは、月経が正常化する最低の体重とされているからです。


 次に食事指導です。食行動の自己観察記録として食生活日誌を毎日記入してもらい、1週間ごとに吟味していきます。正常な食事パターンの回復を目指して、1日3回(朝、昼、晩)の食事を決まった時刻に摂取する習慣をつけてもらいます。1回の量が少量しか食べられない場合は1日4~6回に増やして食べ、家族と同じ内容の食事を、家族と一緒に食べず、別に食事します。家族は一切患者さんに対して指示はせず、医師の指示に従って食べるかどうかは患者さんにまかせます。食べる量も、まず1週間の量を100%とした場合、次の週はその20%を増やし、その次ぎの週は前の週を100%としてまた20%を増やして摂取します。こうして、体重が1週間に0.5~1kg増加することを目標とします。


◆神経性大食症の患者さんの場合

 神経性大食症とはどういう病気なのか理解を深めてもらうために、資料を渡してよく読んでもらい、課題を一緒に吟味します。特に大食と排出行動をいかにコントロールするかについては、認知行動療法に基づいて治療していきます。大食は、過激なダイエットの反動や心理的ストレスが原因で発症することが多いため、規則正しい食生活の励行、適正体重の安定と維持、ストレスの回避および対処法を学習することが重要となります。同時に、自己誘発性嘔吐を減らすよう指導します。食べては吐く行為をなくすことで、心身への負担を軽減し、経済的な負担も減らすことになります。食生活日誌を1週間ごとに検討し、1回でも大食が減っていれば賞賛してあげ、変化のない場合はその原因を患者さんと吟味します。


 排出行動は、大食による体重増加を防ぐための行為です。自己誘発性嘔吐や下剤、利尿剤の乱用等が、いかに身体に害を及ぼすかを学習します。嘔吐はさまざまな合併症を生じさせる原因となりますので、食後1時間は嘔吐ができる場所(トイレや洗面所)に近づかないことを約束させます。嘔吐は一時的な苦痛の解消にはなりますが、永続したときに身体に与える害が大きい事、嘔吐している限り大食は止まらないこと、嘔吐すると浮腫を来たしやすい体質になるなど、嘔吐による害を知ってもらい、嘔吐したい気持ちを他のことで散らすなど指導します。また下剤や利尿剤の乱用も身体に与える害は大きいので、中止するように指導します。


入院による治療

 入院治療は、その適応基準を満たし、かつ治療への動機づけが十分になされていて、患者が入院治療に意欲を見せた場合に行われます。ただし、入院治療だけで完全によくなるという考え方は正しくありません。入院治療は、悪循環を断ち切るひとつの契機にはなりますが、真の回復はやはり退院してからの本人の病気を治そうという取り組みにかかっています。医者任せや病院任せの考えでいると、退院してからの悪化率が高くなるといわれています。


 神経性無食欲症の患者さんの場合の入院は、行動療法を行って治療します。一方、神経性大食症の患者さんの場合は、外来で認知行動療法の治療をしても、大食と嘔吐がどうしても止まらない場合に入院し、正しい食生活を学習し、大食と嘔吐を止めたいと強く希望した場合に限って入院します。その場合、入院中は大食と嘔吐をしないことを約束してもらい、もし約束を破った場合は退院してもらうようにします。なぜなら、スタッフに見つからないように大食するようなことがあれば、かえって大食を支え容認することになり、治療行為に反するからです。入院期間は、普通1~2カ月間で、あくまでも大食と嘔吐の悪循環を中断することができ、正常な摂食行動に戻った段階で退院して、外来治療を続けることになります。このほか、精神症状や問題行動が起きた時も、短期間入院して治療を受けることがあります。


各種治療法

 摂食障害の治療は精神療法が主体です。それは、思春期や青年期に起こる不安、また家族や社会の人間関係の葛藤から起こる不安など、これらの不安をコントロールしきれない精神病理が背景にあって摂食障害が発症していることから、精神療法がもっとも有力な治療として用いられています。精神療法には、近年とくにその効果が注目されている認知行動療法をはじめ、対人関係療法、集団療法、家族療法、精神分析療法、カウンセリングなどが挙げられます。また状況に応じては、薬物などを使った身体療法なども導入されることがあります。いろいろな治療方法がありますが、摂食障害に万能な治療法があるのではなく、複数の治療法を組み合わせながら、患者さんの病状や経過をみて最適な治療法を選択して行われます。もちろん、生命に危険性がある場合、入院治療が先になります。また、低栄養状態で体力が特に低下している場合は、先に体力の復活や維持を優先してから、その後に精神治療を行います。ここで、主な治療法について説明していきます。


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