摂食障害 こんな人が摂食障害になりやすい

こんな人が摂食障害になりやすい

 世の中の多くの若い女性が「痩せたい」と思い、老いも若きもダイエットを行っている風潮の中で、ダイエットするすべての人が摂食障害になっているというわけではありません。もちろん障害となるリスク要因はたくさんある時代ですが、やはり摂食障害になりやすい人、なりにくい人はいます。神経性無食欲症になりやすい人というのは、基本的に「不安」が強い人です。もともと努力家ですので、それが機能している間はしっかりした人であり、きちんとした人ですが、ひとたび自分のルールが機能しなくなったような状況では、その変化に対応しきれず、一人大海に放り出されたように気持ちになって強い不安感を生じます。この不安が「不食」へと向かいやすくなるのです。不食になりやすいタイプの人というのは、「自分のペースでやりたい」、けれども「それを私はこうやります」と人に対して自己主張できないタイプです。「努力すれば報われ、いい子にしていれば褒められる」という状況にある時は問題ありませんが、この2つの要素が両立できなくなった時に苦しみます。この苦しみが「不食」という病気につながっていくものと考えられます。そしてそれを促進させている要因のひとつに生育環境等もあると思います。


 一方、神経性大食症になりやすい人というのは、「自分が嫌いだ」「自分を好きになれない」という強い感情を常に溜め込んでいる人です。自分を嫌いだと思う気持ちが蓄積されている例として、自分自身が虐待を受けたことがある、両親が不仲なのは自分のせいだ、両親が離婚できないのも自分のせいだ、といった事例などは典型的な例です。虐待の被害にあっていて、自分を好きだという人はいないでしょう。また批判的な親や、世間体を優先させる親がいた場合でも、自分が好きになれないことが多いのです。自分を好きになれない理由というのは、自分の本心を人に言えない、肝心なことが言えない、その苦しさを胸にいっぱい溜め込んでいて、そのエネルギーが大食症を引き起こす引き金になっています。


身体・精神・生活面に及ぼす影響

身体面への影響(身体合併症)

  • 1. 血液の異常:さまざまな程度の貧血症状があります。白血球の減少もしばしば認められ、重症の場合は血小板まで減少します。ただし、かなりひどい痩せにもかかわらず、血液検査で正常範囲内を示すことがありますが、これは痩せて循環血液量も減少して血液が濃縮されているために、見かけ上は正常値を示すからです。
  • 2. 電解質の異常:極端な摂食制限や嘔吐によって低カリウム血症が生じます。低カリウム血症は、心臓に影響して不整脈を引き起こし、突然死の原因になることがあります。また希ですが、極端な塩分制限による低ナトリウム血症で、けいれんが起きることもあります。
  • 3. 循環器系の異常:低体重になると、徐脈や不整脈、低電位差、STIT変化、QT時間の延長、T波異常などの心電図異常がみられます。また胸部X線で心陰影の縮小、心エコーでは左室径・右室径・大動脈径の減少、左室重量の減少などが認められています。
  • 4. 消化器の異常:亜鉛の摂取量が減少して血中濃度が減少すると、味覚障害が起きて、味付けが極端になります。また低栄養状態になると、胃や腸の粘膜が萎縮し、消化管の運動の停止によると考えられる腸閉塞症も希に起こります。その他、胃の内容物の排泄時間が遅くなるため食後の腹部膨満感や、腸機能の低下によると考えられる便秘も起こります。大食による影響としては、嘔吐のために唾液腺が刺激され、おたふく風邪のように顔が腫れたようになります。また胃拡張や嘔吐による食道の傷も生じます。消化機能の低下や血便が出たりします。
  • 5. 肝機能障害:低栄養状態が続くと、肝臓の酵素が軽度に上昇します。また飢餓状態になると、重篤な肝障害を引き起こして希に死亡することもあります。
  • 6. 腎機能の異常:腎機能が低下し、浮腫が生じます。
  • 7. ホルモン系の異常:低体重で低栄養状態になると女性ホルモンが減少し、そのために無月経や甲状腺ホルモンが低下したり、副腎皮質ホルモンの上昇などの異常が生じます。これは脳の視床下部の機能異常によるものと考えられます。
  • 8. 脂質代謝の異常:摂食制限や不食によって脂肪をほとんど摂らず、低体重なのに、血中コレステロール値がしばしば上昇します。原因はコレステロールの胆汁への排泄低下やコレステロール代謝が低下するためと考えられます。
  • 9. 骨・筋肉系の異常:神経性無食欲症になると骨粗鬆症が進み、骨折することがよくあります。また思春期前に神経性無食欲症になると身長の伸びが停止します。筋肉系の異常としては、筋肉の萎縮が認められています。
  • 10. 中枢神経系の異常:睡眠が浅くなって不眠症になります。原因は不明ですが、脳波異常や希に全身けいれん発作も起こります。さらに脳のCTスキャンやMRIで脳萎縮像がみられ、認知機能や集中力が低下することもあります。
  • 11. 尿の異常:急激な体重減少により、尿中にケトン体が生じます。
  • 12. 皮膚系の異常:皮膚が乾燥してたるみやしわが増えます。またうぶ毛が濃くなり、頭髪の脱毛が生じます。
  • 13. 歯の異常:嘔吐を繰り返すため、胃散が口の中に上がって歯のエナメル質や象牙質が溶けて、虫歯になりやすくなります。30歳代で歯が脱落してしまう人もいます。
  • 14. 膵臓の異常:膵炎を発症したりします。

精神面への影響(精神合併症)

  • 1. うつ気分:神経性無食欲症においては低栄養や体重減少によって、また神経性大食症においては大食して嘔吐を繰り返し、自己嫌悪となって無気力やうつ気分が生じます。特に神経性大食症の場合、抑うつ気分が生じるため、それを解消するために大食し、その後再びうつ気分が生じるといった悪循環に陥ります。うつ気分とは、ふさぎ込んで意気消沈し、物悲しい気分になることです。
  • 2. 強迫症状:強迫とは、自分では望まないのに、つまらない考えや感情などが頭にこびりついていて、それが何度も頭に浮かんできて抑えようとしても不可能な状態をいいます。摂食障害においても、自分では望まないのに、意味のない行動を繰り返して行い、それをしないと不安にかられます。この傾向性は神経性無食欲症においては顕著で、食物やカロリーに対しては強いとらわれがあって、痩せるために徹底したダイエットや過剰な運動をします。この強迫症状は、痩せれば痩せるほど強くなり、古くから神経性無食欲症との関係が指摘されてきました。
  • 3. 性格の変化:神経性無食欲症と性格は古くから研究されてきたテーマです。フランスの精神医学者・ジャネは、神経性無食欲症の人を強迫性タイプとヒステリータイプの2つに分類しました。その後も研究され、完全主義的で強迫的タイプ、内気で恥ずかしがり屋タイプ、内向的で強迫タイプ、親の夢を満たす完全で手のかからない良い子タイプなどが指摘されました。いずれも、完全主義的で強迫的な性格傾向を表しています。几帳面で、生真面目で、何事もきちんとしている良い面と、物事にこだわり頑固で融通が利かないといった悪い面を持ち合わせています。ところが、病気になって大食をし、嘔吐するようになると、性格が変わって衝動的になり、我慢ができない性格に変わります。
  • 4. 不安:摂食障害の場合、体重の増加や肥満に対しての不安や恐怖が常にあります。神経性無食欲症においては食事時に緊張と不安が高まり、神経性大食症においては大食後の体重増加が不安になります。この不安や緊張を緩和するために、嘔吐や下剤の乱用が行われるのです。不安や緊張が続くと、体の調子が悪くなって、動機や息切れ、腹痛や下痢、頻尿や手のひらの発汗などが生じてきます。
  • 5. 集中力の低下:低体重で栄養不良になると、脳の働きが弱くなって考える力がなくなります。頭が冴えず、物事に集中できないため同じことを考えて堂々巡りになります。
  • 6. イライラ感:気分がイライラすることが多く、家族や友人、同僚や仲間との人間関係がうまくいかなくなります。そして、家庭や学校や職場でさまざまな問題を起こし、結局まわりの人たちと仲違いすることになります。

行動面や社会生活への影響

  • 1. 儀式的行動:神経性無食欲症や神経性大食症になると、いつも決まった行動パターンを儀式のように繰り返すようになります。不安や恐怖や嫌悪感があっても、儀式を繰り返さないと気が済まなくなります。これは強迫症状や完全主義的傾向と深くかかわっています。
  • 2. 過剰な運動:とにかく太ることが嫌だから、何キロも走ったり、常に体を動かしたりして過剰な運動をするようになります。じっとしていると、カロリーが脂肪となって太るのではないかという不安や恐怖が根底にあります。また、座ったり眠ったりして休むことは怠け者の証拠だと考え、罪悪感をもつ人もいます。
  • 3. うそをつく:うそをつくことが、日常茶飯事になります。たくさん食べたと言ったり、また食べたように見せ掛けたり、体重をごまかしたりします。
  • 4. 家族や友人関係:摂食障害になると、家族や友人からのけ者にされたと感じます。人付き合いが嫌になり、次第に周囲から孤立していきます。最初のうちは、周りの人も患者さんを心配して話しかけたりしますが、そのうちにかかわらなくなると無視されたと思い、怒ったりします。ますます周りの人たちも避けるようになります。例えば、食物を小さく切り刻んだり、食べ物の真ん中だけを食べたり、食事に関して厳しい規制をつくったりする食生活を見たりすると、周りは患者さんを避けるようになります。家族や友人は、健康や体重の話題にまったく触れなくなるか、そのことばかりを口にするかのどちらかになります。
  • 5. 学校や仕事での挫折:神経性無食欲症の人の関心といえば、ただひとつ痩せることだけです。やせ細った患者さんを見て、友人や周りの人たちはそれが病気であることを察しても口に出しては話さなくなり、やがて患者さんから離れていきます。本人も世間からおかしな目で見られたくないと思い、必死になって勉強したり働いたりしますが、結局は挫折してしまいます。
  • 6. 社会からの独立:食事も家族と一緒にしなかったり、友達との食事や集いにも言い訳をして顔を出さなくなっていくと、孤立しかありません。減量に夢中になればなるほど孤立して寂しくなり、ひとりぼっちになります。また大食して肥満傾向になれば、太った自分を見られたくないと思い、外出しなくなって引きこもりになります。

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