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Update:2023.02.22

ゾルピデム(商品名:マイスリー)とは

目次

ゾルピデム(商品名:マイスリー)とは

ゾルピデムは、作用時間がとても短いタイプの睡眠薬で、特に入眠障害(寝つきが悪い)に対して使用されるお薬です。1987年にフランスで初めて販売され、その後日本やイギリス等世界数か国で販売されています。商品名はマイスリーという名前か、もしくはジェネリック医薬品の場合は名前に「ゾルピデム酒石酸塩」とつきます。マイスリーという名前はMY SLEEP(マイ スリープ)に由来し、その名前の通り高い催眠作用を有します(以下、ゾルピデムという名前で統一)。

心が不安定になってしまうと、必要以上に脳が活発に働いてしまい、不安を強く感じてしまったり、眠れなくなったりします。こういった脳の働きを抑えてリラックスさせる代表的なお薬としてベンゾジアゼピン系があります。ゾルピデムの作用メカニズムはベンゾジアゼピン系と同様ですが、化学構造式がそれとは異なるため厳密には「非」ベンゾジアゼピン系と呼ばれます。また作用としても不安や緊張、睡眠障害に対して効果があるベンゾジアゼピン系とは異なり、ゾルピデムは選択的に睡眠障害に対して効果を発揮するため不安、緊張に対する効果は弱いです。

一般的にベンゾジアゼピン系で問題視される副作用として依存性や離脱症状が挙げられます。ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン系であるためそういった副作用が無いかというと全くそうではありません。作用メカニズムはベンゾジアゼピンと同様ですので、お薬を服用する際の注意点もベンゾジアゼピン系と同様と認識してください。

ゾルピデムの作用について

ゾルピデムは不眠症に対して効果を発揮するお薬です。ただし、不眠に至る原因は多く存在するため、ゾルピデムを使用する際は不眠の原因を確定してから使用する必要があります。特に統合失調症や躁うつ病に伴う不眠症に対しては、ゾルピデムの効果が期待できないため使用できません。

ゾルピデムは作用時間がとても短く服用後40分程度で最高血中濃度に達した後、速やかに体内で代謝されます。そのため、寝つきが悪いといった入眠障害に対して効果がある一方、夜中に何度も起きる、朝早く目覚めるといった場合にはあまり効果が期待できないお薬です。効果の発現、消失がシャープであるため翌日まで催眠作用が持ち越されることがないため日中の眠気などが少ないというメリットがあります。

ゾルピデムの服用方法について

ゾルピデムは5mg錠と10mg錠が販売されており、1回5~10mgを就寝直前に服用します。患者さんの年齢や症状、状態によって用量を判断しますが、1日10㎎以上服用してはいけません。また、65歳以上の高齢者の場合は1回5㎎から開始します。

前に書いた通り、ゾルピデムは入眠障害(寝つきが悪い)に対してよく使われるお薬ですので、例えば夜中に目が覚めてしまった場合などの対応方法はあらかじめ医師に相談するようにしましょう。自己の判断で夜中にもう1錠服用することは無いようにしてください。

ゾルピデムの注意点について

ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン系と言われますが、作用メカニズムはベンゾジアゼピン系と同様ですので、服用における注意点もベンゾジアゼピン系と同様です。

臨床試験時に報告されている主な副作用は以下の通りです。

  • ふらつき:4.0%
  • 眠気:3.4%
  • 頭痛2.8%
  • 倦怠感(だるさ):2.8%
  • 残眠感(目覚め後の眠さ):2.6%
  • 悪心(吐き気/気持ち悪さ)2.1%

また、重大な副作用として、依存性、離脱症状、一過性前向性健忘というものがあります。ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系といったお薬は、長期間服用していると身体がその状態に慣れてしまい、お薬がないと落ち着かなくなったり、服用量を増やさないと効果がなくなってしまったりします。このような状態を依存性といいます。また、お薬の服用をいきなり中断・減量すると、一気に症状が悪化する離脱症状が起きたりします。一過性前向性健忘とは、お薬服用後から眠りに入るまでの間の記憶がない状態のことで、眠りに入る前にふらっと歩き回るといった夢遊症状が発現し、翌朝その記憶が無いことがあります。

ゾルピデムの作用はアルコールと似ているため、ゾルピデムの服用期間中に飲酒はしないようにしてください。お仕事上での付き合いなどでどうしてもお酒を飲まなければいけない場合などはお薬の減量や中断について医師・薬剤師に相談してみてください。

服用できない/注意が必要な患者さん

以下の患者さんはゾルピデムを服用することができません。

  • 緑内障の患者さん
  • 重症筋無力症の患者さん
  • 重篤な肝機能障害を有する患者さん
  • 肺気腫など呼吸機能が大きく低下している患者さん

また、以下の患者さんは少量から開始するなど慎重な投与が必要です。

  • 65歳以上(高齢者)の患者さん
  • 妊婦/授乳中の患者さん

65歳以上の高齢者の場合、肝臓の機能が弱まっている可能性があるため、副作用が強く出てしまうことがあります。妊婦/授乳中の患者さんにおいては、服用により胎児・母乳へお薬が移行することが分かっています。特に妊娠初期の服用には注意が必要です。